終着駅の男 〜旅人図鑑 2人目〜


「ここが俺の終着駅です」

口数の少ない青年から返ってきた言葉は意外なものだった。

2年前の夏。
サロマ湖にある「さろまにあん」という ゲストハウスに泊まった時のこと。

男女別相部屋の二段ベッドが並ぶ部屋で、ある青年と出会った。
彼は20代半ばくらいで、スリムながらもしっかりした体格、男前で日焼けがよく似合っていた。

挨拶を交わし、旅人同士のありふれた会話をする。
どこから来たの?バイク?明日は天気ヤバそうだね。

たわいもない質問にもじっくりと考えてから答える青年。
衛星回線のようなタイムラグ。

口数も多くないようだし、あまり話しかけても悪いかな?そっとしておこうか。
最後に「明日はドコに行くの?」という質問を投げかけて会話を終わらせようとしたら・・・。

そこで返って来た答えが

「ここが俺の終着駅です」だった。

そっとしておくの中止。
聞きたいことが山ほどできた。

夕食後に始まった飲み会で詳しく話を聞く。
もともと農業に興味があって、ついこないだまで宮古島でキビ刈り(サトウキビ)をしていたこと、そこで仲間から「プリティ」というあだ名をつけられたこと。
サロマには定住して働くために来ており、バイトではなく本格的に農業に従事するつもりであること。
ゆっくりと丁寧に話してくれた。

なるほど、それは確かに終着駅だ。

仕事は明後日から始まるらしい。
じゃあ今日は就職祝いだ、プリティに生ビールを!
その場にいた宿泊者と乾杯。

翌日、台風が近づく中、プリティと遠軽のトリトン(回転寿司)へ行き、ワッカ原生花園のレンタル自転車でサイクリング。すごい向かい風の中、お互い必死に耐えながら黙々と漕いだ。

北海道の自然は厳しい。
大規模農場は機械化が進んでいるとはいえ、仕事はキツいと聞く。

プリティは真面目そうだけど、続けられるかな?
と、少しだけ思っていた。

1年後
ボクはまた同じ宿に泊まった。

ふとプリティの事を思い出して連絡をしてみた。
彼はまだサロマの農場で働いていた。
仕事が終わったら宿に遊びに来るという。

1年ぶりの再会。乾杯。
最初は車なんで・・・、とお茶を飲んでいたプリティも、気づけばビールを飲み始める。宿にお泊り決定。
車で10分も走れば自分の家があるのに。
翌朝は4時半起きで仕事に行かなければいけないのに。

去年、一瞬会っただけのボクのためにわざわざ来てくれたのが嬉しかった。

プリティは相変わらず口数が少なくて感情もほとんど顔に出さない。
だからちょっと分かりにくいけど、実は人好きなんだろうと思った。

初めての出会いからそろそろ2年。
プリティは今もサロマの農場で働いている。

サロマに行くのがいつもより楽しみになった。

 

 

2 Comments

エロちゃん

楽しいね〜
このシリ〜ズ!^^

バズりん、今度 漫画の描き方(ハーフトーンのつけ方)教えてね♡

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